新規抗アレルギー軟カプセル剤の安定的薬物放出に向けた検討(特許5503939)
服薬のコンプライアンスとアドヒアランスの向上、そして薬物放出性の改善を目標とした新規抗アレルギー軟カプセル剤の製剤化検討を行いました。
TY-20の製剤開発
次の事項を設計目標とし、アゼラスチン塩酸塩を有効成分とした新規抗アレルギー軟カプセル剤(TY-20)の製剤化検討を行いました。
≪設計目標≫
・服用量の軽減
・薬物放出性の向上
1.用量の軽減 ~服薬コンプライアンスの向上~
市販製剤(錠剤)に比して1回の服用量を減らすことにより、服薬コンプライアンスの向上を実現しました。
図1.錠剤(1回2錠) |
図2.開発製剤(1回1カプセル) |
2.薬物放出性の向上 ~つらい症状に速く効く~
アゼラスチン塩酸塩を溶解して軟カプセル剤に充てんすることにより、薬物放出性を高めました。
更に、体内での吸収を高める為、内容物を水に分散しやすくする技術である自己乳化型マイクロエマルション(Self-MicroEmulsifying Drug Delivery System;SMEDDS)の手法を用い製剤設計を行いました。
●TY-20の製剤組成
表1.TY-20の製剤組成 |
滴下前 |
滴下直後 |
エマルション形成 |
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図3.水への分散の様子 |
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水に内容物を滴下すると、瞬時に微細なエマルションを形成し、分散する。 |
●薬物放出性の評価
【溶出試験】 図4.TY-20の溶出試験 |
TY-20の問題点とその改善
1.崩壊遅延
剤皮に含まれるゼラチン分子とカプセル内容物の相互作用により、ゼラチン分子間に不可逆の架橋構造が形成されることが原因で不溶性の薄い膜が形成されることがあります。この反応は内容物に接したカプセル剤皮の内側で起こる為、形成された不溶性膜により、内容物の放出が妨げられ崩壊遅延が起こります。 TY-20において安定性を確認したところ、不溶性膜の形成による崩壊遅延が確認されました。
図5.TY-20の剤皮浸漬試験 |
2.安定性の改良
●TY-20の改良組成
TY-20の問題点である崩壊遅延に対して種々の添加剤の検討・崩壊遅延の改良を行い、経時的に安定した薬物放出を実現しました。
表2.TY-20の改良組成 |
●TY-2015及びTY-2016の評価
【剤皮浸漬試験】
図6.TY-20,TY-2015,TY-2016の剤皮浸漬試験 |
【溶出試験】
TY-20※ |
TY-2015※ |
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図7.TY-20,TY-2015の溶出試験 |
※各内容物を軟カプセル剤に充てんしたもの
【示差走査熱量(DSC)解析】
図8.TY-20,TY-2015のDSC解析 |
まとめ
・1回服用量の軽減を実現したことにより、服薬コンプライアンスならびにアドヒアランスの向上が期待された。
・SMEDDS技術の導入により、錠剤に比して速やかな薬物放出を実現した。
・崩壊遅延に対しては、適切な添加物により改善されることを見出した。
・本検討の結果、薬物の放出性に優れた実用性の高い製剤の供給が可能になった。
本技術に関する発表
本技術について、次の学会・学術誌にて発表を行いました。
【日本薬学会第130年会】 開催日:2010年3月28日(日)~3月30日(火) (1: 東洋カプセル 研究所 製剤研究部) |
本研究についてご興味をお持ちの方は、
こちらからお問い合わせ下さい。